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skype 英会話の体験記

今起きている恐慌はむしろモノとカネとが決別状態に陥り、カネの世界が一人歩きを始め、やがては暴走することによって、今日に至っている。 このことをどう解釈すべきか。
確かに、今、衝撃はモノの世界に確実にそして厳しく波及している。 だが、モノとカネの二人三脚の中でここまで来たわけではない。
ウォール・ストリートとメイン・ストリートは離婚状態に陥っているのである。 カネはカネの論理でしか動いていなかった。
もっとも、リーマン・ショックに端を発する今回の展開に先立って、モノの世界に全く問題がなかったかというと、必ずしもそうではない。 アメリカでも欧州でも、そして日本でも、景気に息切れ感が出ていたことは事実なのである。
ただ、それは従来のような意味での生産過剰から調整局面に入るという景気循環の構図とは少し様相が異なっていた。 資源インフレと製品デフレが同時進行する奇妙な状況の下で、企業の収益と労働賃金に下押し圧力がかかり、成長力が低下するという展開だった。
新興国の成長需要が資源価格を吊り上げ、彼らの労働供給が収益と賃金を押し下げる。 その狭間で、主要国経済はここ数年来、循環的というよりはむしろ構造的な厳しさに甘んじてこなければならなかった。
この姿自体が、過去の恐慌発生時とは初期条件としてかなそこに、こうしたモノの世界の展開とは切り離された形で進むカネの世界の暴走が重なった。 かくして出来あがった全体構図は、これまでの恐慌とはかなり様相が異なるものだ。

いずれにせよ、モノとカネが決別状態にあるという点では、現状には、あたかも産業革命以前のイギリスの金融市場に逆戻りしたような観がある。 一八世紀以前、ロンドン金融街「ザ・シティ」においては、商人たちが商人たちのために金融業を営んでいた。
産業のための金融ではなかった。 今、我々はあの時に先祖返りしているのだろうか。
そんなことはないだろう。 歴史は繰り返すことはあっても、後戻りはしない。
今、起こっていることの背景には、金融の自由化とグローバル化、そしてその中で進行する金融の技術化・数量化という展開がある。 これらは極めて二一世紀的な展開だ。
ところが、そうした今日的展開が、我々を再びモノとカネとの決別状態に引き戻しているのである。 管理通貨制度下で恐慌はなくなった?さて、第三の相違点として挙げたのが、今回の展開が管理通貨制度の下で起こっているということだった。
これに対して、ここまでみて来た歴史的な恐慌事例は、いずれも金本位制の下で発生したものなのである。 しからば、金本位制とは何で、管理通貨制度とは何か。
両者は通貨制度として基本的に対照的だ。 金本位制は窮極の非裁量的通貨制度である。
それに対して、管理通貨制度は基本的に全てが裁量によって決まる通貨制度である。 抽象的にいえばこのようになる。

両者の違いをより具体的に示すには、金本位制を語るところから入るのが一番手っ取り早い。 金本位制とは、要するに金を通貨価値の裏づけとする通貨制度である。
平たくいえば、「金の切れ目が金の切れ目」となる通貨制度だ。 金本位制をとる国は、国庫が保有する金の分量に見合ってしか、通貨を発行出来ない。
この不可思議な力学は、今後において何をもたらすことになるのか。 今後の展開に対して、どのような影響を及ぼすことになるのか。
この点については、最後で立ち戻ることとしたい。 具体的な仕組みとしては、まず、金平価というものを設ける。
金の公定価格だ。 例えば、一九二九年恐慌が発生した時点の米ドルの金平価は一オンス二○・六七ドルであった。
金本位国の通貨当局は、いつでも、誰に対してでも、請求があれば、この公定価格で通貨を金と交換しなければならない。 それが出来なくなりそうなら、通貨の発行量を減らさなければならない。

かくして、キンの切れ目がカネの切れ目である。 これに対して、管理通貨制度の場合には、通貨発行量は金融政策当局(中央銀行)の裁量によって決まる。
要はヒトがカネの切れ目を管理するシステムだから、管理通貨制度というわけである。 金本位制の下で恐慌が起こることは、実に恐ろしいことである。
なぜなら、キンの切れ目がカネの切れ目という縛りが効いている限り、政策的に信用収縮を止めることは事実上不可能だからである。 今回のように、各国の政府が金融機関に資本を注入したり、融資保証を行ったりという政策を裁量的に展開することは出来ない。
無尽蔵に金を保有していない限り、それは不可能だ。 実際問題として、一八二五年恐慌の場合にも、一九二九年恐慌の場合にも、この問題が政策の手を縛った。
一八二五年の場合には、かのロスチャイルド家の偉大な先祖、ネーサン・ロスチャイルドの必死の金掻き集め作戦がその場を救った。 一九二九年の場合には、この恐慌到来をきっかけに各国が次々と金本位制から離脱していくことになった。
一九三○年代の前半を通じては、英・米・仏の三カ国の間で激しい為替切り下げ競争が繰り広げられる展開となった。 この為替戦争を経て、結局、アメリカが唯一の金本位国として残った。
そのことが、第二次大戦後におけるドル基軸通貨体制につながっていく。 この点については、前にみた通りである。

それはさておき、ここで注目すべきは、恐慌が深化する中で、国々が金本位制という裁量の余地のない通貨制度を放棄せざるを得なかったという点である。 別の言い方をすれば、恐慌による傷口が広がるのを免れるために、管理通貨制度に移行したということである。
恐慌の深化を避けようとすれば、国々は金本位制から管理通貨制度に移行する。 このことは、要するに、管理通貨制度の下では金本位制下に比べて恐慌が起こり難い、あるいは、恐慌が発生しても、その深化を食い止めやすい、ということを示唆している。
事実、世界が金本位制を放棄して管理通貨制度が一般化して以来、恐慌という言葉は経済論議の後景に退いた。 それに代わって、人々の悩みの種となったのがインフレーションであった。
いうならば、慢性インフレという代償を払って恐慌を退治したというのが、戦後における政策論の主流を占める考え方であった。 恐慌が発生して経済活動が激しく縮減しそうになると、管理通貨制度の下では通貨の大増発が行われる。
それによって信用収縮は免れる。 だが、通貨供給量が膨張し過ぎれば、インフレが発生しやすい。
かくして、管理通貨制度の下では、デフレの心配はあまりしなくてすむが、インフレに対しては常に警戒怠るべからずだ。 このような発想で人々は戦後世界の経済過程を語るのであった。
棄宣言がもたらしたアメリカ経済のインフレ経済化によって、巡り巡ってサブプライム問題が発生し、リーマン・ショックに立ち至った。 そのような顛末をたどって今日に至っているということは、要するに基軸通貨国であったアメリカが全面的な管理通貨体制に移行したことが、すなわち、今日における恐慌発生の遠因になっているということにほかならない。
アメリカが金本位制から管理通貨制度へ移行したことよって、恐慌は過去のものとなるどころか、一二世紀グローバル時代において、猛威を振るうに至ったのである。 そういうことになる。
かくして、今日の状況は実にユニークだ。 管理通貨制度の下で、恐慌は起こらないという戦後の通念を破った。


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